電伝虫

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本日は研究所の見学にお越しいただきありがとうございます。
梅雨の季節ということもあり、屋外庭園には色とりどりの紫陽花が咲き誇っていますので、ご観賞ください。
これらの紫陽花には「でんでん虫」がいます。あちらの葉にいるカタツムリのような虫がそうです。電気を伝える虫なので「電伝虫」と漢字で書き、遺伝子操作によってカタツムリと電気を掛け合わせてできました。カタツムリと同様に雨を好み、今もしとしとと降る雨の中、紫陽花の葉の上にいるわけです。
電伝虫は、水と化学反応して水素と酸素を発生させます。理科の授業でも習った方がいると思いますが、水の電気分解と同じ性質を持っています。
発生した水素は自家発電や送迎バスの燃料としてエネルギー利用され、酸素は産業・医療用ボンベとして使われます。
電伝虫は電気を帯びているため、直接触れると雨の中で感電する恐れがありますので、ガラス張りの屋内施設からお楽しみください。
SF
公開:21/06/27 07:06
研究所 梅雨 紫陽花 でんでん虫 カタツムリ 化学反応 水素 酸素 電気分解

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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