Ⅰ.060 ペルビエの攻防~隙目~

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 袋小路の中央には、道に縁取られた孤島のように住居が並んでいた。左右の住居のデザインが異なることから、別個の業者が余らせた隙間に無理くり建てられたのだろう。面積を稼ぐために二階部分は反り返るように広がっており、童話に出てくる不気味な花弁ような様相だ。
「痕跡は?」
 待ってくれ主人。
 わたしは集中力を高め、蒼猫の痕跡を追った。
 藍白い輝きを内包した濃紺色の粒子が漂っている。
 これが蒼猫の気配。
 正確には蒼猫が使っている香水の匂いだ。記憶している探偵資料に該当するものがないことから、おそらく組織オリジナルのブランドであり、攪乱のための道具でもあるのだろう。
 その軌跡を注意深く追うと、我々の頭上へと伸びていっている。気のせいか、色濃かった痕跡がここからかなり薄れている。その先にあったのは、花弁のような住居の2階にあるバルコニーだった。よく見ると、室内へ続くドアがわずかに開いていた。
ファンタジー
公開:21/06/26 15:01
連載 ファンタジー 怪盗 探偵

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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