つーるつる

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しとしと。長い雨が降っていた。
がらがら。玄関の扉を誰かが開いた。
ぺたぺた。濡れた足で上がってくる。
床の間を背に小太刀を握る。
「つーるつる」
そいつの調子に合わせて「つーるつる」私も応えた。
「つーるつるる」
「つーるつるる」
「るつつつーつつるーる」
「るつつつーつつるーる」
「るっつつつつるーるつるるつつるつ」
「るっつつつつるーるっるるつつるつ」
「お前、間違えたな」
そいつはニヤッと笑って私の肩をドンと押した。私は仰向けに倒れて床の間に頭を打った。

ほんの子どもだった。くだらない悪ふざけだった。
こんな風にたあいのない遊びをして、ふざけあって、たくみは大人になり損ねた。
ホラー
公開:21/06/21 18:14

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