宇宙旅行

「行き先とご予算でご検討して頂ければと」
　営業マンはテキパキと僕の書いたエントリーシートから乗車可能な宇宙船と旅行コースを絞り出していく。
「月で一泊コースに、重力体験をオプションで付けるのが可能です」
「月までですか」　
「団体ツアーでしたら少し先へのプランもございますが、今回はご友人とお二人でとの事でしたよね。月旅行は人気がありますので、プランは充実しておりますよ」
「あの、実は友人って猫なんです」
　キャリーケースの中でにゃあと鳴いた。
「勿論大丈夫ですよ。事前に健康診断と適応チェックがございますが」
「彼の希望なんです。今回の旅行は」
「猫様にも合わせたプランも考えてみましょう」
　二人と一匹は宇宙船の展示を見に行く。宇宙船は一見乗用車に見えた。
「見慣れた姿の方が事故が少ないんですよ」
　月を背にしてキャンピングカー型宇宙船が駐車場に降り、楽しげに笑う子供の声が聞こえた。