かわいそうな猫

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拓也が倒れた。身体がぐちゃっと潰れて内臓が出ている。
「人が飛び出して来た!」
車から猫が降りて来て、拓也の顔を覗き込む。
「可哀想に。即死だ。動物病院に行ってもなんにもならないよ」
子どもの猫が寄ってくる。
「ヒトさん、小さいねえ。どうして飛び出して来たのかなぁ」
拓也は俺と虫を追っていたんだ。
「おともだちとかきょうだいとかいないのかなあ」
俺は自分の足に視線を落とした。ここを離れなくては、あの子どもの猫に見つけられる。捕まったら、子どもを作れない身体にされて、耳を切られる。
「貴方も猫と暮らせばいいのに。野良ヒトなんてやめて」
ツヤツヤの長い髪を揺らして、麻里奈がバルコニーから声をかける。
胸元のネックレスの鈴がころころと響く。
俺には猫は怖いよ。麻里奈…、また会いに来るよ。
ファンタジー
公開:21/06/19 19:14

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