月を修理する

月を修理することになった。そういえばこのごろ満ち方が中途半端。満月の時期になっても周囲が暗くぼんやりと欠けたまま下弦の月になる。
月の修理部隊が編成された。靴職人の小人たちだ。部隊を乗せたブーツ型宇宙船修理号が三日月の夜に出航した。推力は太陽光。背に張った太陽光パネルの帆が太陽光を受けて宇宙船は月に向かった。
修理号は月面に着陸せず上空で周回する。定位置で小人たちが縄梯子で次々に月面に降りる。月面にクレーターと彼らの影が長く伸びた。修理は単純な欠損箇所を縫合して脆弱なクレーターを補強するだけで済んだ。「朝飯前」「造作もない」と口々に喋りながら小人たちは縄梯子で宇宙船に上ってゆく。上空から修理完了を確認すると彼らは地球に戻った。
帰還した修理号を待っていたのは歓迎パレード。船長のネズミ大尉と小人たちとを乗せた大ムカデの特設バスは歓声のなか夜の大通りを進んだ。三日月がきれいに輝いていた。