核、売ります

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「核屋」と看板のある店に入った。
「いらっしゃいませ。どのようなご用事で?」
「コピーライターだが、いいコピーができなくてね。アイデアを形にする商品があると聞いて来たんだ」
「ありがとうございます。クリエイティブなお客さまに喜ばれております」
「ひとつお願いするよ」
「手前どもの商品はお客さまの渦巻く表現意欲を形にします。冷たい水が何かを核にして凍るように」
「それで核屋、いい屋号だ。で商品は?」
「お客さまに合わせて見繕います」
「はじめての客でも大丈夫かい」
「それはもう、こうしてお話を伺うとお客さまにふさわしい商品が浮かびます」
そういって、店主は小さな紙箱を持って来た。
「後ほどお開けください。時間が経つと効果が半減します。半減期にご注意下さい」

俺は家に帰って箱を開けた。
かさかさと蝉の抜け殻がひとつ入っている。
これで今度のコピーが決まるだろうか。不安になってきた。
その他
公開:21/06/18 15:39

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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