スーツアクター

着ぐるみを脱ぎ一服する。一仕事終えた後の煙草はうまい。
「お疲れ様です」
怪人集団のお出ましだ。舞台上では悪ぶっているが裏では礼儀正しい。
「重さん、今日のステージもサポートありがとうございました！」
なんのなんの。ヒーローと同じように君らも注目の的だ。緊張して当然。今日のステージでの震えは武者震いだと信じているぞ。
「はい！いつか重さんみたく立派なスーツクターになってみせます！」
緊張しっぱなしの怪人達の肩をヒーロー達が叩く。
「倒される演技が最高だった」や「攻撃にキレが増したんじゃないか？」とお互いを評価しあう。
先達としてそれを見るのは嬉しい。
おっと、そろそろ次のステージの準備だ。
煙草を捨て、俺は司会のお姉さんの着ぐるみを着てステージへと戻る。
「今でも信じられないよ…あのスリムなお姉さんが着ぐるみだったなんて…」
「しかも中身は５０代メタボのオッサン…プロの仕事って凄いよな…」