持ち帰り専門店

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部屋で一人書類を書いていると、ふと人の気配を感じ顔を上げる。扉の前、黒装束に身を包む者がいた。
『ごきげんよう。早速ですが貴方のクビをA国へと持ち帰らせて頂きます』
私はペンを置くと深く息をつき、己の首を差し出した。
『抵抗しないのですか?』
「ああ、指揮官である私が死ねばこの戦争も止まるだろう」
先程書き終えた書類に目を落とす。
「私の首と共にこの書類も持ち帰ってくれないか?A国将軍に宛てた停戦懇願書だ」
黒装束は書類を受け取ると鼻で笑う。
『この書類が公に出れば、貴方は指揮官という立場を失いますな』
「どうせ私はここで死ぬんだ。立場など墓に持って行っても意味がない」
黒装束はくつくつと笑うと書類を手に扉へと向かう。
「ちょっと待て!私を殺さないのか?」
『ええ、貴方がクビになる書類を頂きますので。それに私、殺し屋ではなく持ち帰り専門店です。なので両国に戦争の中止を持ち帰らせて頂きます』
公開:21/06/16 21:00

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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