労働の帰り

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私が働く花と緑の処刑センターは環境問題への意識が高くて、業界で最も廃棄物の分別が細かい。
朝から晩まで15分おきに分別収集のドローンが屋上にやってくる。
血のついた靴やバッグ、噛みきれない肉片や骨片、皮脂の染みたロープ、体液で錆びたネジや蝶つがい、鎖や鼻フックや刃物、発砲性の凶器、被害者の皮、加害者の皮、仲裁に入った者の皮。
当直勤務を終えた私はいくつかの廃棄物を手に地下60階から屋上に出る。ここは樹海の真ん中。梅雨の晴れ間の太陽光と湿ったシダの胞子が薫る南風が、私の目と鼻に人間だったころのような落涙寸前のツンとした刺激をくれた。
私は肉片を避雷針に刺して加害者の皮を専用のプランターに並べる。警報が鳴り、警備兵の少年がふたり手をつないで現れて、「まだ肉付いてんだろ」と私を叱る。
専用のスプーンでこそいだ肉を彼らのかわいいポーチに納めて私は帰る。家には猫がいる。昨日作ったポテトサラダがある。
公開:21/06/16 13:27

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