031.境界

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 村の外に一歩たりとも出てはいけない。
 父さんは毎日のように言い聞かせていた。
 でも僕は外へ出てみたかった。
 村外れの門。ここならあまり大人が来ないし、今は門も壊れていた。
 一歩ぐらいは…。
 僕は村と外の境を一歩だけ踏み越えた。
「何してるの?」
 途端に声をかけられた。
「ごめんなさい!」
「こっちだよ」
 声は外側からだった。花畑の中に女の子がいた。
「外に出ようとして、いけないんだ」
「君はどうなんだよ」
「私は内緒の散歩中よ」
「もう内緒にならないね」
「じゃあ、ふたりの内緒にしない?」
 言ってその子は僕の手を取った。
「ほら行こ」
 誘われるままに、僕は村の外へと完全に出てしまった。
 そして、周りの世界が一変した。
「ヒサビサノニンゲン。ズットマッテタカイガアッタ」
 僕の手を握るのは、もう女の子じゃなかった。
 僕は心の中で、父さんに謝ることしかできなかった。
ホラー
公開:21/06/17 21:30
ファンタジー ホラー 子ども

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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