自分リモコン

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我社は社員に自分リモコンが支給される。
設定後、直属の上司に預ける決まりだ。
課長の私は部下の分を保有している。
「す…ません…のけん…そうだ…があ…」
新人Rが声を上げているが聞き取れない。
Rのリモコンの音量ボタンで声量を上げる。
逆にTは地声が大きく電話対応の音量を下げた。
Qに振った仕事は午前中に仕上げて欲しいので
午後は捨てる覚悟で早送りを設定した。

ある日、意を決して部長室にいた。
「実はリモコンの使用をやめようと思います。私も経験上使われる側は良い気はしません。第一、皆を信頼しているのでコレに頼らなくても進捗は上げられると思います」
部長は終始無言だ。
リモコン導入に尽力した発起人の一人が部長だという噂が脳裏をよぎった。
徐ろに自席の引き出しを開けた部長は取り出したソレを私に向ける。

「失礼しました」
部長室を後にする。
私は何故部長室に呼ばれたか思い出せないでいた。
SF
公開:21/06/17 06:00
更新:21/07/30 00:03

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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