おもてだけ

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 L国とI国はそれぞれU国の王を招くこととなった。
 U王は質素倹約を旨とし、贅沢を忌み嫌うことで知られていた。
 王も気を遣ってか、両国を訪ねる前に粗酒粗肴を望む示唆の書簡を送った。
 L国は王の望みに応え驢馬車で出迎えると、宮殿で最も小さな応接間で農民が作った粟粥と焼き魚、麦酒を振る舞った。望み通りのもてなしに王は大変満足した。
 I国は、そんなL国の応対を「王の冗談を真に受ける馬鹿めが」と嘲笑い、壮大なパレードと儀装馬車で出迎え、大広間で歌舞とともに国中の名産品で作った、祭典でも滅多に見られないような豪華絢爛な料理を振る舞った。
 要望と相反する歓迎に顔をしかめた王の様子に焦ったI大公が「これは我が臣民すらも飽々するほどに、常日頃行われている程度のつまらぬもてなしの儀にございます」とありもしない口から出まかせを吐いた。
 しかし案の定U王は嘘を見抜き、早々にI国を後にしたのであった。
その他
公開:21/06/13 19:39

赤井夏

アカイナツではなくアカイカです。
 

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