魔法瓶

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摩訶不思議な珍品に出会えると評判の雑貨店を訪れた。
店内には、年代物の骨董品が数多く置かれていたが、今でも見かけるごく普通の魔法瓶があった。
すると、鷲鼻が特徴的な魔女に似た店主が話しかけてきた。
「お客さん、これはただの魔法瓶じゃないよ。その名のとおり魔法の瓶さ。買ってくれるなら、その現象を見せてあげるよ」
「ちょうど魔法瓶を探していたので、見せてください」
店主は、魔法瓶に沸騰したお湯を入れた。
「いいかい。ここからが本番だよ」
魔法瓶から湯けむりが立ち上り、魔人のような大男が出てきた。
「うわー! アラジンと魔法のランプみたいですね」
「早く願い事を伝えなっ」
その途端、湯けむりは消え、魔人の姿がなくなった。
「流れ星と一緒で、湯けむりと魔人が消え去る前に願い事を声に出して伝えないと叶わないのさ。
お客さんは、これで一回、魔法を使っちゃったから、願い事を叶えるチャンスは残り二回だね」
ファンタジー
公開:21/06/13 07:10
雑貨店 年代物 骨董品 魔法瓶 鷲鼻 魔女 店主 湯けむり 魔人 アラジンと魔法のランプ

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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