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海沿いの港町に、海底に眠る駅があります。
かつては沖合の、小さな浮島に建つ駅でした。駅舎には海神(わだつみ)様の祠が設けられ、近海を通る船が、漁の安全を祈願したり、船を停めて時化をやり過ごしたり、網や釣り具を繕いがてら、漁師仲間と一服したりする、船の中継駅だったのです。しかし何年か前、島ごと波に呑まれ、海底へ滑り落ちてしまいました。
毎日朝と晩に、多くの漁船が駅の上を通ります。
使えなくなった駅より、魚の行方が気になるのでしょう。海神様に挨拶するでもなく、速度を上げて横切って行きます。
駅舎の壁が障害になり、その奥にどんな光景が広がっているか、人の目にも機械の目にも、捉える事は出来ない様です。
あるいは海神様のお力かも知れません。
まるで神話の方舟の様に、数千、数万匹の魚が、海藻の茂る駅舎を泳ぎます。船の駅から魚の駅に姿を変えた浮島を見つめ、海神様は、今日も祠の中に微笑んでおられます。
かつては沖合の、小さな浮島に建つ駅でした。駅舎には海神(わだつみ)様の祠が設けられ、近海を通る船が、漁の安全を祈願したり、船を停めて時化をやり過ごしたり、網や釣り具を繕いがてら、漁師仲間と一服したりする、船の中継駅だったのです。しかし何年か前、島ごと波に呑まれ、海底へ滑り落ちてしまいました。
毎日朝と晩に、多くの漁船が駅の上を通ります。
使えなくなった駅より、魚の行方が気になるのでしょう。海神様に挨拶するでもなく、速度を上げて横切って行きます。
駅舎の壁が障害になり、その奥にどんな光景が広がっているか、人の目にも機械の目にも、捉える事は出来ない様です。
あるいは海神様のお力かも知れません。
まるで神話の方舟の様に、数千、数万匹の魚が、海藻の茂る駅舎を泳ぎます。船の駅から魚の駅に姿を変えた浮島を見つめ、海神様は、今日も祠の中に微笑んでおられます。
ファンタジー
公開:21/06/15 21:31
ラジオ『月の音色』
月の文学館『無人駅にて』
応募見送り作……
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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