あの雲って、どんな味？

「あの雲って、どんな味かなぁ」

小学生の娘が、空を見上げてそんなことを呟いた。

「わたあめみたいにふわふわしてるから、甘いのかもしれないね」

それを聞いて思わず吹き出した。子供って面白いこと考えるなぁ。

「残念だけど、雲は味なんてしないよ。あれは水蒸気のかたまりみたいなものなんだから」

そう言うと、娘はキョトンとした顔でこっちを見た。

「ママは、雲食べたことあるの？」
「え、ないけど」
「じゃーわかんないでしょ！」

自分で確かめてもいないのに、結論を出すのはおかしいでしょ。

そう言われたわけじゃないのに、そう言われた気がして。

「…そうだね、わかんないね」

娘の方がよっぽど大人に見えた、ある日の昼下がりだった。