分業と統合 ―単孔類の男

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 消化吸収器官。増えるための分業と統合。
 冷凍グラタンの過熱時間をベルトコンベアーの距離に換算することに違和感がない巨大な脳を持ったライン主任に妄想するゆとりなど無かったはずなのだ。同様に、かけたチョコが冷え固まるまでに必要な距離すらも。分業と統合。
 消化吸収器官に等しく色別のラインが限られた工場内を上へ下へと粛々と流れていく。無数の耐熱皿という存在はもはや時間に等しく、時間と空間は限定されている。分業と統合。
 開封ラインから加熱焼成ラインへ。加熱焼成ラインからチョコ掛けラインへ。チョコ掛けラインから冷ましラインへ。冷ましラインからQOLラインへ。死ぬまでずっと、分業と統合が続く白衣に覆われた消化吸収器官たちの沈黙が金になる世界の分業と統合。
 俺は主任の脳だから悩んでいた。
 これから排泄するブツは、肛門ラインなのか、尿道ラインなのか、生殖ラインなのかを。
 俺は単孔類でありたい。
その他
公開:21/06/15 09:20
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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