恐怖のマラソン

スマートフォンと通知音で目覚めた。
今はもはや使っていないフリーのメールに一件届いていた。
件名「マラソンエントリー」
本文「目標6.3km 完走すれば商品　できなければ罰金が課せられます」
と書いてあった。全く身に覚えもなく、迷惑メールの類かと当然のように無視したが、翌日銀行口座を見てみると、1万円が引き出されていた。
驚きと恐怖と怒りが、同時におそってきた。
するとまた「目標6.3km」と書かれたメールが届いた。大学に入学して一人暮らしを始めてから、運動をほとんどしていない自分にとっては厳しい距離だが、ちょうど家から実家もそのくらいの距離だったから、興味本位で歩いていくことにした。
息を切らしながら実家にたどり着き、扉を開けると。出迎えた母親が開口一番
「完走おめでとー。商品はあなたの好きなロールキャベツよ」
子離れできない親が1番怖いと身に染みた瞬間だった。