中庭の男

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 ムカデの駆除を依頼した。
 本当は、ムカデには不自由していないのだけれど。
 中庭に人を招くのは久しぶりだったので、父を読み返していたら、だんだん腹が立ってきた。
 それもいつものことだ。
 今日は6月12日のページを読まずに焼いた。その裏側には6月11日があって、それはとても悔やまれたのだが、6月の11日と12日が無くなったからといって、それを悲しむ人なんてあるだろうか。
 ―なんにもなさそうな日だものな
 すると、中庭が一つ大きく頷いた。
 レモネードを飲んだときに置き去りにした赤いストローが、紐を引っ張るとどこまでも伸びていくアルミ製の梯子みたいなのを、笑われて以来だなと、ハグしあう。
 中庭と。
 肩口からムカデがぞむぞむと落ちてくる。
 ドーナツの穴だなんてありふれたお世辞に舞い上がっていった、日記のページを焼いた灰に触れたムカデが互いの尻を噛みつき合って生まれた。
 中庭だ。
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公開:21/06/13 05:11
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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