029.認識

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「こっちこっち」
 と、君は僕を導いた。
「本当にこっちなの?」
「うん。大事なものがあるんだ」
 一緒に探してと頼まれた僕は、普段行かない森の中を進んでいた。草木が生い茂るその道は、一歩先へ行くのも一苦労だった。
「早く早く」
 君はまるで浮きあがるように、その中をスイスイと歩いていく。
「ねぇ、知ってる?この先って、子どもは行っちゃダメなんだよ」
「へぇ。君って子どもなんだ」
「うわ。嫌な言い方!」
 少しムキになって、僕は君を追った。
 次第に、ごうぅぅという重たい音が聴こえてきた。
「うわぁ」
 森の奥。
 そこでは、すごいたくさんの水が空から落ちてきていた。
「滝だっけ?初めてみた」
「そうなんだ。わたしは二回目」
「それで、大事なものは?」
「あったよ」
 君の目の前にあったのは、まるで眠るように死んでいる君だった。
「ありがと。見つけてくれて」
 眠る君を遺して、君は消えた。
青春
公開:21/06/12 09:06
子ども

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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