寿命ネコババ

5
3

『ああ、死にてえ』
早朝、駅のホームで、退屈そうな顔をして若い男がつぶやいた。
何かに悩んでいるというよりは、口笛を吹くように、自然と口から漏れ出た言葉のようだ。
その瞬間、男の服の隙間から寿命が転がり落ちたのが見えた。
大きさにして「一時間」くらいだろうか。
それは瑞々しい青色で、煌々と輝いている。さりげなく近寄り、すぐに拾い上げると、上着のポケットに大事にしまった。
死にたがりの持ち主に返してやるほど、お人好しじゃない。

電車を乗り継ぎ、病室に着くと、君はいつものように寝ていた。
身体からは寿命が漏れ出し、ベッドから滴り落ちている。掬い上げて、身体に戻してみるが、どす黒く変色した寿命はすぐに朽ち果ててしまう。

溜息をついて、来るまでに拾い集めた寿命をポケットから取り出すと、何かに引き寄せられるように、細い身体へ入り込んでいく。
苦しそうに膨らむ白い頬に、少しだけ血が通い、赤らんだ。
ファンタジー
公開:21/06/08 01:45

リンムー( 東京 )

大学生
お願いします。

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容