赤桜城伝説

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桜城の主だった富樫四郎兵衛は戦国の世に珍しく、平和を愛した。
その気風は家中に及び、富樫家は商売に活路を開き始める。その金で、四郎兵衛は城の至る所に桜を植えた。
富樫の行動は度を超えた。高価な品を餌に敵を退かせ、援軍の求めには大金を寄越す……
全てを金で解決する行為は反感を買い、敵対勢力とかつての味方たちが桜城へ攻め込んだ。
一方の富樫家は、怠慢が災いし刀槍武具をまともに扱える者がおらず、さらに兵糧の蓄えも怠り、いざという時に『松明·矢·梅干し』となる松竹梅は尽くを桜にしていた。
城は落ち、全てが灰となり、桜も姿を消した……
それから時が経ち、城跡に大量の桜が生え始めた。
気味悪く思った領民たちはすぐに切り倒すが、数日で復活する。
城にいた人々の怨念か、なぜか桜花が赤く見えた。

桜城は、現代の城郭資料にもその名で記されている。
しかし、地元民は畏敬の念を込め『赤桜城』と呼んでいるようだ。
その他
公開:21/06/10 21:15

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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