先端部

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早朝、寝苦しさを感じて目を覚ますと隣で寝ている夫の肩がうっすらと焦げていて、開けっ放しの扉の向こうに流れついた溶岩流は黒々と溜まり、廊下やリビングはもはや岩場で、玄関ドアやシンクや家電製品が根こそぎ溶けた不穏なにおいと、工場街のような水蒸気の煙が視界を覆って、その底に完熟ザクロのような赤みを残して放熱する溶岩が見えて、ひとまず最悪な事態は回避できてよかった、命拾いとはこのことだなぁと思った。
私はエアコンをつけて汗を拭い、スマホで溶岩流の先端部を写真に収めてインスタにあげた。夕べの雨が天井のドリッパーからぽとりぽとりと私たち夫婦のベッドマットを通過して雑味のない美味しいコーヒーが床下に溜まっていく。今日は「おもしろ民家徹底訪問」という番組の収録がこの家であるのにこの状況では無理かもしれない。もう少し寝ていようかなぁ。さつまいもがあれば焼きいもができるのになぁ。窓から見えるのは自衛隊のヘリ。
公開:21/06/10 16:09

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