『望遠鏡』シゲと僕

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放課後、シゲと僕は3階の教室のベランダから、小さく見える町並みを眺めていた。

「あれが駅」

「うん、JRと京成ね」

「あの森が八幡のやぶ」

「うんうん。それに図書館と公民館、八幡神社だよ。あの木の後ろが、シゲの家でしょ?」

「ああ、俺んち小さいなあ…あっ、あの赤い屋根は孝子の家だよ」

「そうなの」

「2階の窓が孝子の部屋さ」

「遠くて、見えないや」

「双眼鏡を使うか?」

と言ってシゲは、手を軽く握り双眼鏡のように目に当てた。

「何だよ、それ」

「手作り双眼鏡さ。これが中々使えるんだよ」

「何言ってんだよ」

「おっ、孝子が帰って来た」

「えっ?」

「着替えを始めた!」

「見えるの?!」

「ウワッ」

「シゲ、僕にも見せてよ!」

「ハハハ、冗談だよ」

「楽しそうね?」

振り返ると、孝子が笑っていた。
そして、3人並んで手作り望遠鏡で僕らの町を眺めた。
その他
公開:21/06/09 16:51
更新:22/07/19 09:49

杉本とらを( 東京 )

言葉遊びが好きで、褒めらると伸びるタイプです。
良かったら読んでやって下さい!

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