作家の缶詰
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昨日まで校門前にいたヒヨコ売りのおじさんが、今日は缶詰を売っていた。せっかく貯金箱からお金を持ってきたのに。がっかりして帰ろうとしたら、おじさんに呼び止められた。
「お嬢ちゃん、本は好きかい?」
わたしは頷いた。
「そうかい、じゃ、これなんかどうだい?作家の缶詰だよ」
そう言って差し出されたのはなんのへんてつもない缶詰だ。
「中にね、作家が入っているんだよ」
耳を寄せてみると、カリカリとペンを走らせる音。この缶詰は、作家が書き終えた瞬間自然に開いて、物語が湧き出すのだそうだ。
すてき!
わたしは手の中のお金を差し出して、一番大きなオレンジ色の缶を買った。きっと大長編だ。
それがその棚にあるヤツね。
え?膨れてるから傷んだ蜜柑の缶詰かと思ったって?
それがね、ずっと前から『書けない書けない』ってため息ばかりで膨れてきちゃって。
最近は気配も無くなって。これってやっぱり未完の缶詰なのかなぁ?
「お嬢ちゃん、本は好きかい?」
わたしは頷いた。
「そうかい、じゃ、これなんかどうだい?作家の缶詰だよ」
そう言って差し出されたのはなんのへんてつもない缶詰だ。
「中にね、作家が入っているんだよ」
耳を寄せてみると、カリカリとペンを走らせる音。この缶詰は、作家が書き終えた瞬間自然に開いて、物語が湧き出すのだそうだ。
すてき!
わたしは手の中のお金を差し出して、一番大きなオレンジ色の缶を買った。きっと大長編だ。
それがその棚にあるヤツね。
え?膨れてるから傷んだ蜜柑の缶詰かと思ったって?
それがね、ずっと前から『書けない書けない』ってため息ばかりで膨れてきちゃって。
最近は気配も無くなって。これってやっぱり未完の缶詰なのかなぁ?
ファンタジー
公開:21/06/06 16:12
ボケ防止にショートショートを作ります
第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。
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