4
6

いつも花柄のワンピースで出社してくる同僚の女性は人付き合いが苦手なのか俯きがちで、大抵手元ばかりを見ていた。
しかし清潔感があり誰よりも丁寧に仕事をこなすので、俺は好意を抱いていた。
ある雨の日の終業後、傘を忘れた彼女を自宅まで送ることになり、玄関先でお茶でもどうぞと引き留められた。
リビングは全面花柄の壁紙で彼女らしいなと自然と笑みが溢れる。座ってお茶を待つ間にぐるりと見渡す。
(いや待てよ…これは…)
目を凝らしてみると壁には大小様々な人の手形がついており、それがまるで花柄のように見えていたのだ。
震える手元を抑えつつ出された紅茶を一口だけ飲み、急用を思い出したと口にした次の刹那脳の奥が白く霞みはじめた。
彼女は微笑みながらもハッキリとこう言った。
「先輩の手形も今日からここに仲間入りですよ。私、手フェチなんです」

少し開いた扉の隙間から奥には、何か黒い人の山のようなものが見える…。
ホラー
公開:21/06/06 13:44
更新:21/08/12 19:21

ことのは もも。( 日本 関西 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていこうと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

カントー地方在住
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容