飛び出せ絵本

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「なんで出てこないの?」
結香が絵本を覗きこむ。幼稚園の友達から仕掛け絵本の事を聞いたらしい。
「これは飛び出さない絵本なのよ」
口を尖らせて、それでも諦めが付かない様子でページをめくっては逆さまにしたり、叩いたりしている。
「あ、駄目よ。本は大事にしてね」
「あっ、何か出てきた!」
結香が何かを小さな指でつまみ上げて手のひらに乗せた。
「ほらあ、破れちゃったじゃなーー何それ」
「お星さま?」
結香の言うとおり、それは手のひらでチカチカと光っている。
「ねがいごと聞いてくれるかな?」
光る星にぶつぶつと言う。
「何をお願いしたの?」
「ないしょ!」
光る星はひゅーんと窓から外へ出ていった。
「ママ、空が黒くなってきたね」
遠くで一番星が輝き出す。絵本を見ると星があったであろう場所が白く色が抜けていた。
「帰ってくるかな?」
結香はそっと窓際に絵本を置いた。
「きっとね」
ファンタジー
公開:21/06/07 22:17
仕掛け絵本 星に願いを

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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