地毛×2
1
4
最近抜け毛に悩んでいる俺は、今日も今日とて虚ろな目で鏡を覗き込む。後退したおでこは虚しく光るだけだ。
まだ三十代前半だと油断していたが、毎年6月に入ると、その量は格段に増えた。育毛剤も使っては見たが、まるで効果はない。先日同棲していた彼女とも別れて、途方に暮れていた。
そんなある日、俺は風呂場でゲジゲジを見つけた。古めの物件にずっと住んでいるからか、このところ妙に多い気がする。床を這うようにして歩いているそいつを、スリッパで叩き潰す。スリッパをあげると、死骸はぐちゃぐちゃにつぶれている。それをなんと無く拾い上げて、俺は飛び上がった。
ゲジゲジの死骸らしいそれは、俺の髪の毛だった。
必死に携帯を取る。死にそうな思いで繋がったのは別れた彼女だった。渋々出てきた彼女は、面倒臭そうに言う。
「あんたまだ地毛だったでしょ。
ゲジゲジは、地毛から生まれるから『毛地毛地』なのよ?」
まだ三十代前半だと油断していたが、毎年6月に入ると、その量は格段に増えた。育毛剤も使っては見たが、まるで効果はない。先日同棲していた彼女とも別れて、途方に暮れていた。
そんなある日、俺は風呂場でゲジゲジを見つけた。古めの物件にずっと住んでいるからか、このところ妙に多い気がする。床を這うようにして歩いているそいつを、スリッパで叩き潰す。スリッパをあげると、死骸はぐちゃぐちゃにつぶれている。それをなんと無く拾い上げて、俺は飛び上がった。
ゲジゲジの死骸らしいそれは、俺の髪の毛だった。
必死に携帯を取る。死にそうな思いで繋がったのは別れた彼女だった。渋々出てきた彼女は、面倒臭そうに言う。
「あんたまだ地毛だったでしょ。
ゲジゲジは、地毛から生まれるから『毛地毛地』なのよ?」
ホラー
公開:21/06/07 12:52
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