Yに託して良いものか

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小さな頃、ミステリ小説に夢中になった。
ただ現実には、トリックやロジックが駆使されることなんてない。
今まで40年ぐらい生きてきたが、ニュースでも耳にしたことがない。
実際、現実は平凡で、小説は奇なりということだ。
……とつい5分前までは思っていた。
まさかこいつに……。
薄れゆく意識。血まみれの身体。スマホをいじっていたら、いきなり刺された。
眼の前では、部屋の各所を拭いて回るあいつの姿。
随分落ち着いて見える。
そして直感する。こいつは前から自分に殺意を持っており、きちんと計画し、実行したのだと。
ならば……。
こいつが犯人という証拠を残さねば。
ダイイングメッセージ。
指を動かし、気づかれないようにYと書く。
そして襲ってくる後悔。
なぜYと書いた。
今、手が動かせた間に、スマホをいじり、警察に電話すれば良かったじゃないか。
死の際、映ったのは、Yがあっさり消されるところだった。
ミステリー・推理
公開:21/06/07 09:25

碧色あをゐ

引っ越しをして、通勤時間が増えました。
なにをしようか考えた末が今です。
日々に少しのスパイスを。

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