一年越しの手紙

1
3

 年に一度海に道ができる。普段は海に浸かっているため入ることすらかなわない。
 潮が引くこの季節には一目見ようと大勢の観客たちがカラフルな色どりのものを身に着けてやってくるのだ。
 目的はそれぞれで写真を撮ってアップしたりその道の砂を持って帰ったりする人もいる。
 僕は例外でその人たちの群れに入らず別の目的でやってきた。少し海水が染みた砂の上で独り穴を掘る。ガジガジガジ。


 流さなないようにするための準備はできている。場所も覚えた。一年を待つ。


 春には雪解けの湿った泥が跳ねる。夏にはがんがんのクーラーのもとで平穏に。秋には上着を一枚羽織り、冬には部屋でも靴下を。


 一年が経つ。僕は朝一番に水が引くのを待った。人の影が数人ぽつりと見える。
 埋めた手紙を開ける。「合格おめでとう」の文字が朝日に揺らいだ。
その他
公開:21/03/12 21:02

橘 一生( 日本 )

ぼちぼちモチベーションを保ちながら頑張りたいです。使い方がわかんない時があります
ショートショート日常系しか書かなくてッている気がする。というかあんまここで書いてなかった。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容