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終業時間間際、デスク脇に置いてある温席計を確認する。
かなり低いな…よし!
「皆、聞いてくれ。今夜、飲み会を行う予定だったが急きょ私に用事が入ってしまった。悪いが飲み会は延期とする。勿論今日の残業はしなくていい。皆、この後は各々自由にしてくれ」
私の言葉に温席計がぐんぐんと上がっていく。
仲の良い者同士で飲みに行こうと話す者、せっかくだしと企画書を立ち上げようと意気込む者、家族サービスでもしようかと考える者、席に座る社員達が喜びにそわそわし始める。
改めて温席計を確認すると社員達の喜びに比例し、温席も徐々に高くなっていく。
温席計は場の空気の温かさを計るもの。これのおかげで私は部下に嫌われずにすんでいる。

「ただいま」
今日は私も定時に帰宅した。
「えっ!?今日飲み会じゃないの?何早く帰ってきているの?」
妻は冷たい視線を私に向ける。
でも、温席計が徐々に上がっているのを私は見逃さない。
公開:21/03/12 20:31

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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