ロールキャベツ

「ロールキャベツって食べ辛いですよね」

新規開店のロールキャベツ屋。ドアを潜るとカウンターだけの店内。ちょうど空いていた席がマスターの真ん前だった。そして、言われた。

ロールキャベツは食べ辛い、と。

「まあ確かにキャベツの繊維でうまく噛み切れないことがありますね」
その前に注文を聞いてくれよ、そう思いながら答える。

「そうなんです。そこで当店では3種類のロールキャベツをご用意しました」マスターがメニューを差し出す。

A.噛み切りやすい
B.そうでもない
C.その他

「お勧めはAです」自信満々に言うと、マスターは鍋を手にした。

しかし俺は天邪鬼だ。
「Cで」
マスターの目を見ながら言い切った。

チッ

店内に舌打ちが響いた。客が一斉に俺を見ている。

「何か？」隣の客に問いかけると
「誰もAを食べないから、本当に噛み切りやすいのかがわからないんだよ」
と怒ったように言われた。