土星が呼んでいる
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近ごろ地球の重力がおかしい。強くなったり弱くなったりする。しかも、太陽や太陽系の惑星にも同じ現象が発生し、物理法則が破綻している。
だから、多くの人間が惑星の重力に引かれ、宇宙に飛び立っている。
ぼくも授業中に少し体が浮いた。それをみた同級生が「行き先はどこだ?」と聞いてきた。
強さと方向を考慮して、ぼくは答える。
「土星だろう」
「いいなあ」同級生がうらやましがる。「おれの彼女なんてイオまでひとっとびだ」
「ハレー彗星よりましだろ。会えるのは75年に1回だ」
「冗談でもよしてくれ。ところで、お前の旅立ちはいつごろかな」
「この調子ならあと一週間だろうな」
「これでお前とも会えなくなるわけか。寂しいなあ」
「土星で会えるさ」
「そうかもな」
「おい、そこうるさい!」
そう叱責した先生の体が浮かび上がり、窓を突き抜けると、大空の彼方へと消えていった。
だから、多くの人間が惑星の重力に引かれ、宇宙に飛び立っている。
ぼくも授業中に少し体が浮いた。それをみた同級生が「行き先はどこだ?」と聞いてきた。
強さと方向を考慮して、ぼくは答える。
「土星だろう」
「いいなあ」同級生がうらやましがる。「おれの彼女なんてイオまでひとっとびだ」
「ハレー彗星よりましだろ。会えるのは75年に1回だ」
「冗談でもよしてくれ。ところで、お前の旅立ちはいつごろかな」
「この調子ならあと一週間だろうな」
「これでお前とも会えなくなるわけか。寂しいなあ」
「土星で会えるさ」
「そうかもな」
「おい、そこうるさい!」
そう叱責した先生の体が浮かび上がり、窓を突き抜けると、大空の彼方へと消えていった。
SF
公開:21/03/13 17:36
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