最後の唐揚げ

　ある日、職場の同期四人が仕事帰りに居酒屋に出かけ、そこでいくつか料理を注文し、飲み放題でドリンクを飲んでいた。
　しばらくすると、注文した料理も少なくなり、唐揚げが皿に一つだけ残った。それを誰が取るワケでもなく、皆は話し込んでいた。彼らはただ『最後の一人』にはなりたくなかった。
　しかし、気がつくと誰にも知られないうちに最後の唐揚げが無くなっていた。
　大人数であればまだしも、彼らはわずか四人だ。誰かが最後の一個を取れば、他の誰かが気づくはずだ！
　今、彼らは『誰が食べたのか？』という実にくだらない事を考えていた。
「誰が食べても良いんだが」とAが口を開く。
「でも誰なのか知りたい」とBが牽制する。
「隠し事はいけないよな？」とCが自白を促す。
「俺たち同期なんだからさ」とDが後押しする。
　この中の誰が最後の唐揚げを食べたのか？
　こうして職場の同期四人による不毛な心理戦が幕を開ける。