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湖の僅かに上を、水面に触れることなく緩やかに移動していく釣り竿。あっけにとられた僕は遠ざかっていくマイ竿を絶望の目で眺めやりながら、師匠との会話を思い出していた。
「みにくいアヒルの子、知ってるかい」
「人並みには」
「ほんとに?」
「童話でしょ、アンデルセンだかの」
彼は目を閉じ、不敵な笑みを口元に浮かべて首を振った。
「ちっちっち、違うのだなあそれとは」
彼は明確に「ち」と発音しながら否定した。
「もったいぶってないで教えてくださいよ」
曰く、見にくいアヒルの子。
少なからぬ生物が自己を守るための手段を有している。あるものは毒、あるものは素早さ、あるものは……擬態。
「見たことないですね」
「そりゃあ、見にくいからな」
僕は意識を集中して去りゆく釣り竿をじい、と睨みつけた。ときどき上下に振れる。
くるり、と竿が反転した。
「そこにいるのかい」
竿はぽちゃり、と水面に落ちた。
「みにくいアヒルの子、知ってるかい」
「人並みには」
「ほんとに?」
「童話でしょ、アンデルセンだかの」
彼は目を閉じ、不敵な笑みを口元に浮かべて首を振った。
「ちっちっち、違うのだなあそれとは」
彼は明確に「ち」と発音しながら否定した。
「もったいぶってないで教えてくださいよ」
曰く、見にくいアヒルの子。
少なからぬ生物が自己を守るための手段を有している。あるものは毒、あるものは素早さ、あるものは……擬態。
「見たことないですね」
「そりゃあ、見にくいからな」
僕は意識を集中して去りゆく釣り竿をじい、と睨みつけた。ときどき上下に振れる。
くるり、と竿が反転した。
「そこにいるのかい」
竿はぽちゃり、と水面に落ちた。
その他
公開:21/03/12 00:05
さまようアラフォー主夫
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