きおく　きぼう

奇跡の一本松が落とした松ぼっくりを手に私は皆の前に立つ。
含んでいた水分が徐々に抜け傘を開く松ぼっくり。その中から、あの日の記憶が溢れ出る。
この松ぼっくりはタイムカプセルだ。あの日あった事を忘れないようにと願う記望の詰まった贈り物。
そこには復興を誓った希憶も込められている。
十年目の今日、松ぼっくりの中から出てきた記憶に悲喜交々。
でも、私は安心する。悲しい記憶だけじゃない。喜びの記憶だってしっかり込められている。
だから、見ていて欲しい。
一本松よ、悲しみを乗り越えて、必ず復興してみせる。
その記憶を、どうかこれからも綴ってくれ。
私達に忘れさせないでくれ。記忘を持たせないでくれ…これからもずっと松ぼっくりに想いを記置として残してくれ。
黙とうを済ませると松ぼっくりを水に浸ける。今はまた、この思いをタイムカプセルに仕舞うとしよう。
それに松ぼっくりはよく燃える。皆の心の中に火が灯る。