留守番の条件

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私は、私の半身とも言えるそれを置いて住んでいた家を出た。
非情だと思う。でも、それは半身が望んだ事でもあった。
「私がいたら、きっと貴方は苦しむから…」
そう言って、半身はこの場所に残る事を決めた。
『いつか…いつか必ず迎えに来るから!』
そう約束して、長年過ぎた。
私はその場所に訪れた。今も私の帰りを待っているであろう半身を迎えに。
『久しぶり。調子はどう?』
話しかけると半身は弱弱しく頷く。その存在がかなり薄くなってしまっている。
私にとっても半身には消えてもらった方がいいのだろう…でも、そんな選択はしたくなかった。
私は取り壊しの決まった仮設住宅で一人留守番をしていた震災の記憶である半身を取り込む。忘れかけていた記憶が蘇る。
辛い記憶も今なら受け止められる。
「受け止められるようになったら、戻ってきて」
その条件は無事果たせた。
さあ、この記憶を薄れさせないよう後世へと伝えに行こう。
公開:21/03/11 20:34

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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