海底の郵便ポスト

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その郵便ポストは年に一度、あの日だけ海底に現れる。
なぜ郵便ポストと断言できるのか。それは『〒』のマークが付いているからだ。
だが、赤い珊瑚でできた郵便ポストを誰が、どのように設置したのかはわからない。
明らかなことは、その郵便ポストに投函された耐水性の葉書や防水加工の手紙は配達されているということだ。すべてのひとがいつかは向かうとされているあの国へーー。
「元気にしているか」「もう一度だけ会いたい」「もう苦しまなくていい」ーー文面はそれぞれだけれど、どれもあの日に消え去ったひとたちへの思いと愛情に溢れている。
残されたひとたちの鎮魂の気持ちが海底に郵便ポストという形になって現れるのか。もう会えないだろう大切なひとと便りを介してつながるために。
次の日には跡形もなく姿を消す郵便ポストだが、あの日を忘れないようにという願いも込められているのかもしれない。
そう、あの日。「三・一一」のことを。
その他
公開:21/03/11 19:01
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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