人魚の通学路

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「行ってきます。」

潜水服を着て、ランドセルを背負った。眠い目を擦ろうとしたが、フェイスシールドに邪魔をされる。

シェルターの扉を開けると、すぐに、鮮やかな青色が視界に飛び込んできた。
色とりどりの魚達が珊瑚礁の周りを泳ぎ回り、近づくと機敏な動きで四方に散る。

魚に気を取られながら、通学路を泳ぐ。続々と潜水服を着た小学生達が集まってきた。一際、小さな潜水服を着た子達は一年生だろうか。まだ泳ぐのが下手で、足元がおぼつかない。

昨日、社会の授業で習った。僕たちは「人魚世代」と呼ばれるらしい。陸地が水没してから生まれて、海中で育った世代。陸を知らない世代。


空に目をやると、歪んだ太陽が煌々と輝いていた。海底に落ちた海藻を蹴り、ため息をつく。

かつて祖父母が見た太陽は、一体どんな形をしていたのだろうか。

酸素ボンベから吸わない空気は、どんな味をしているのだろうか。
SF
公開:21/03/12 11:29
更新:21/03/13 17:45

リンムー( 東京 )

大学生
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