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立方体の内側のような真白い部屋。僕は中央の椅子に腰掛け、いつからかその物体を眺めていた。
植物の彫刻が施された白い台座の上に、薄いピンク色のそれは置かれてあった。

物体はやがて意思を取り戻したようにして動き出すと、ぬるぬると台座を滑り降り、地面を這って移動し始めた。それは脳のようだった。

やけに頭が軽い。まるで中身が無いみたいに。ひどくぼうっとするのはそのせいかも知れないなどと考えているうちに、脳はどんどん僕から遠ざかっていく。

僕は脳の方へ向かおうとするが、体は言うことを聞かず明後日の方向へと足を差し出す。脳は脳で、出口のない部屋を壁づたいに、当て所ない前進を続けている。脳が辿った後には、粘着質の透明な物質がへばりついている。

僕がその上で足を滑らせ後ろ向きに倒れたとき、ちょうど頭と脳がぶつかった。

視界が光で満ちていく。
僕は目を閉じて体を丸め、自分の両腕をきつく抱きしめた。
その他
公開:21/03/10 23:59
更新:21/03/11 12:39
忘れてたけど200作目!

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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