rebuild or remove

「とても大事な置物を壊してしまった」
そう会う人会う人に嘆いていたら、
「どんなに傷ついたものもなおしてくれる人がいるんだって」
と、友達が教えてくれた。
教えてもらった場所に行くと、物置のようなボロボロの家屋からはみ出すほどの長蛇の列があった。
「すみません、ここが最後尾ですか？」
相手は愛想なく頷いた。
「なんでも直してくれるって本当ですかねぇ？」
相手は私の顔を睨みつけ、すぐに前を向いてしまった。
ようやく家屋の中に入ると先頭が見えた。最前列の人は、深く黒いフードを被った人と向かい合っていた。
『あの人が職人か。いかにも胡散臭いけど』
列の動きは速い。帰ってくるのは嬉しそうな顔した人しかいなかった。先程の人もそうだった。
順番が来た。
「これ、こんな粉々なんですけど、直せますかね？」
職人は私の胸の辺りに手をやった。
それから私は手に持っていたものを横に投げ捨て、その場を後にした。