宇宙縁日

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今日は年に一度の宇宙縁日。
会場がある駅に着くと、どこか懐かしい電子音楽が鳴り響いてくる。

真っ暗な宇宙空間が、無数に浮かぶ提灯の灯りで照らし出され、遠くからでも会場の輪郭がくっきりと浮かぶ。

会場に入ると、浴衣型宇宙服を着た人々が縦横無尽に動き回っていた。普段は見ることができない、雅な宇宙服だ。

はしゃいだ子供達が、こちらには見向きもせずに頭上スレスレを横切り、慌てて首をすぼめた。
普段なら少し気を悪くするところだが、会場の熱狂がそれを許した。

周囲を見渡す限り、頭上遥か遠くまで店が連なっている。
小隕石射的、無重力金魚すくい、宇宙焼きそば、どこも凄い行列だ。



縁日を小一時間楽しんだ後、疲れ果てて誰もいない最上部へと昇った。

その場で寝転がり、体を宙に預けた。遥か遠くに見える青い星を眺める。

もう帰れない故郷。子供の頃に行った地上の縁日に想いを馳せ、目を閉じた。
SF
公開:21/03/11 11:38

リンムー( 東京 )

大学生
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