0
2

 春の風が吹き始め、コートを持ち歩くようになった頃。俺は一人の女性に出会った。彼女は聡明に見え、どこか子供らしく、美しかった。 
 しかし、鋪道で一回すれ違っただけの話なのだ。声をかければ良かったと、悔やんでいる。
 声をかけていれば、連絡先を交換し、彼女と電話。デートを何回かした後、付き合えてたかもしれない。
 ああ、なんて勿体ない事を。未来、理想そのものの人に出会えることなどないだろうに。
 下を向きながら歩いていると、肩が誰かに当たってしまった。すいませんと言いながら顔を上げる。するとそこに立っていたのは、俺の妹だった。
 即座に彼女を抱きしめ、接吻をした。人の目など気にはならない、今は少しでも長くこうしていたい。それだけだった。
 
恋愛
公開:21/03/10 12:21

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容