桜の樹の下には

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桜の樹の下の土に顔をうずめて記憶を喰べる異形のものは、形がまとまっていない。人を食いやしないかと、恐れながらもさざめいて寄り集まった人々は、形ないものの食事を見守っている。
先ずは、見知らぬ男女。
「誰かを待っているのか?」
「名前も忘れてしまった彼を待ってるの」
「忘れてしまえよ、そんな人のことは」
若者達。
「10年後また桜の樹の下で会おう」
「どうか元気で」
無邪気な子ども。
「はやくはやく」
「姉ちゃん待ってよ、僕も花見するんだ!」
桜を見上げる老婆。
「久しぶりにこの葉桜を見ると、昔を思い出してね」
「随分と見に来てないんですか?」
「もう来ることはないだろうよ」
もうそこには人はいない。残されたはずの思い出も形ないものに食されてしまった。それは形を一人の女にして、まとまった。
それを見て、辺りの人々は嘆く。
「ああ、亡くなった後に戻って来ちまったんだね」
ファンタジー
公開:21/03/10 00:43
更新:21/03/10 00:47

とも

自分の書きたいことを書いて、それを読んで頂けたら。

もしよければ、星とコメントつけてくださると嬉しいです!

アルファポリスでBL小説も書いています。
 

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