私と林檎

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 目を覚すと、私の手には林檎が握りしめられていた。その林檎はピカピカに磨かれ、外から入ってきた光に反射し、輝いている。
「林檎の夢は何なの」
私は林檎を顔の前に持っていき、聞いてみた。しかし答えない。
 私は起き上がる。そして怒りを込めて林檎を地面に叩きつけた。林檎は、落ちたところを中心に円を描いていた。まさに花火だ。
 私は、顔を洗いに洗面所に行く。そして自分の顔を見て思った。なんて醜いんだ、と。
 私はあの林檎よりもこの世に存在している価値なんてない。
 何の役に立てる。変わりは誰だっている。やりたいこともない。自分のためにも、他の人の役にもたてない。それどころか他の命をすり減らす。
 私は顔を洗った後、林檎の元へと戻った。そして地面に落ちていた林檎のカケラを一つずつ口に運んだ。全て食べた後、地面を舐めて綺麗にする。
 後は屋上に行き、飛び降りるだけだ。
 
その他
公開:21/03/09 23:12
更新:21/03/09 23:18

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