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「物見遊山はほどほどに」
人の忠告を聞かないのは昔からだが、バカは死んでも治らない……、か。

太陽は深く傾いている。山道の空気がまた少し変わった。のんびりと空を渡っていたクジラたちの姿はもう見えない。

「陽が沈む前に、"終着点"へ」

ころんだ拍子に筒を落とす。慌てて追いかけどうにか捕まえる。

「最後まで開けてはなりません。ここにはあなたのいちばん大切なものが収められています」

玉手箱かよ。蓋を開けたら婆さんが飛び出てくるのか? 息を切らせて歩くのなんていつぶりだ、まったく、これぞ死人に鞭打ちだね。

二百メートルほど登ると、急にひらけた場所に出た。"終着点"とやらが見える。安堵して一息つくと、後から誰かの叫び声が聴こえた。まったく。

「他人に構ってはなりません、旅の結果はカルマなのです」

もう少し待ってろよな、ババア。
俺は筒をしっかりと握りしめ、もと来た道を振り返った。
その他
公開:21/03/09 23:30

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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