0
2

もうすぐ秋にさしかかろうとする9月の下旬。
墓場に汽車が止まっていた。それだけではない。墓場であるにもかかわらず洋食屋も立っている。
それを見た人は急いで家路につく。
あの汽車はきっとあの世行きの汽車だ。あの洋食屋はきっと中に入った者を食べてしまう恐怖の洋食屋だ。
自分達は何も見なかった。目を逸らし、逃げるように立ち去る。
汽車のドアが開く。洋食屋の扉が開く。しかしそこから何が出てきたのかは誰も見ていない。
暫くすると汽車も洋食屋も消えていた。
あれは一体何だったのだろう?多くの人が首を傾げる。
人々はある墓の前にパンと角砂糖と牛乳が置かれている事に気づいていなかった。
空を見上げれば、流れ星一つ。
それが燃え続けるよだかの星である事にも、誰も気づかなかった。
それに気付けたのは公園に咲くぎんどろの花だけであっただろう。
4月に開花期を迎える花が今咲いている不思議さにも誰も気づかなかった。
公開:21/03/09 20:55

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容