マンホールに落っこちた

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突然マンホールに落っこちた。

「イテテ」

そこはブラジルだった。

「こんなところで何してんのさ」

冷たい声が聞こえる。

「日本人!?」

いかにも暗そうな日本人の男の子がいた。

「おい、助けてくれ。地球の反対側まで落っこちちまったんだよ」

「何言ってんだ。そんなわけないだろ」

「頼む、頼むよ。飛行機代もねーんだ」

「…それは俺を日本へ連れて行ってくれるのか?」

「あぁ。」


それから二人はありとあらゆる方法を試した。

俺は道中いつも歌を口ずさんでいた。
幼い頃、母がよく歌っていた歌

「その歌、知ってる。昔よく聞いてた」

体内に一瞬、衝撃が走った。
その一言で俺は全てを理解した。
マンホールに落ちた意味も、彼が誰であるかも。
俺は涙が止まらなかった。

「ごめんな、ごめん。これからは絶対兄ちゃんが守ってやるからな」

そのとき地面に丸い穴が現れた。
ファンタジー
公開:21/03/09 20:30

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