0
2

妻と子は空を見上げ、打ち上がる花火に歓声を上げている。
私はじっと地面を見つめ、唇と拳をきつく結ぶ。ドンドンと大きな音が鳴る度に心臓が締め付けられる。
何も私は花火が嫌いなわけではない。むしろ大好きだ。でも今だけは空を見上げる事が出来ない。それを見てしまえば私の脳裏に最悪が刻まれてしまう。
あの音だけで震えが止まらない。やはり来るべきじゃなかった…
私の右手を妻がそっと握った。「大丈夫よ」
子が私の左手を強く握る。「パパも見てよ!凄く綺麗だよ!」
どくんどくんと鼓動が早まる。私は意を決して空を見上げた。
ひゅるるる~と火球が空に打ち上がり、パーンと大きく弾けると私の顔を照らした。
「アナタが打ち上げる人工衛星も、きっと皆の笑顔を照らし続けるわ」
私は花火に人工衛星打ち上げ失敗を重ねていた。それは間違いだった。
「ひまわり」みたく皆に愛される衛星を目指すなら花火みたく盛大に打ち上げないとな。
公開:21/03/08 20:15

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容