見せしめの犯人

渇いた銃声。
男性が崩れ落ちると阿鼻叫喚で銀行内はパニック状態になった。
男性は微動だにせず流血は不気味に床を這った。

目出し帽の３人組だった。
１人が手際よく監視カメラを破壊すると、他が現金を詰めるのを急かしている。
更に１人は皆に銃口を向け動かないように脅迫する。
見せしめに既に１人殺している。その事実が場を支配していた。
大金のバッグを人質の女性に持たせて殺された男の隣に座らせた。思わず女性は目を背ける。
１人が行員に向け叫んだ。
「我々の目的はこの男の殺害だ。ドアのロックを解除しろ。そうすれば金と人質の命は助かる」
遠くでサイレンの音が聞こえた。
「早くしろ！この女が死んでもいいのか！」
行員は従いロックを解除した。
煙幕が立ち込め発砲音が轟いた。皆恐怖で身を縮めた。
しばらくして静寂に包まれると女性の叫び声が響いた。
「死体が無い！」

バッグと共に男の死体は姿を消していた。